エレベーターおじさんとインドの仕事②
みなさん、ナマステ。
昨晩もホテルで頼んだペットボトルの水をがぶ飲みして、
「なんか味おかしいな・・・」
と思って聞いてみたら水道水だったという、武本です。
本来は中村が昨日更新予定だったのですが、ジャイプルというところでフィールドワーク中なようで、お休みでした。明日は中村が更新予定です。乞うご期待!
さて、今日は
「エレベーターおじさんとインドの仕事②」
ということで、
「インド人の仕事に対する考え方」
というものを自分なりに考えていきたいと思います。
今朝もおじさんがいたので、写真を一枚撮らせてもらいました。
よく見たら泣きボクロがありますね、相変わらず渋いです。
さて、インドの仕事の話に入る前に興味深いデータを見つけたので少し。
インドと日本の名目GDPの推移です。
名目GDP(USドル)の推移(1980~2016年)(インド, 日本) - 世界経済のネタ帳
おお、インド、どんどん成長してますねー!
この調子で行けば、20年後、30年後には日本のGDPを追い抜く可能性もありそうです。
さて、次いでこちらは一人当たりの名目GDP。
一人当たりの名目GDP(USドル)の推移(1980~2016年)(インド, 日本) - 世界経済のネタ帳
よく見たら、ほんとによく見たら、ちょーっとずつ右肩あがりです。
インドは人口多いですからね、なんてったて約13億人です。
2016年現在の世界人口が73億人なので、計算上は世界の5~6人に1人がインド人ということになります。
インドも大幅に経済成長しているものの、一人当たりのGDPで考えると日本とは大きな差があることがわかります。
つまりは経済的な指標によれば、一人当たりの生産性が日本より大幅に低い、ということになります。
「そんなん知ってるわい、なにがいいたいねん?!」
という声が聞こえてきそうなのですが、僕が言いたいのは
「伝統的に、インド人にとって仕事とは、競い、奪い合うものではなく、分け合うものであったのではないか。」
ということです。
インターネット上に非常に興味深い記事があったので引用させていただくと、
カースト制度とは、周知のように社会的には差別・抑圧のシステムである。一方、経済機能という観点から見れば、同制度は「貧しきを分かち合う」システムでもある。人々は世襲的な細分化された職業に結び付けられており、他の職分への侵食はタブーである。いわば“Winner takes all”を避け、すべての人がわずかとはいえ何らかの分配にあずかることを可能とするシステムである。ワークシェアリングの(極端な形での)先駆けであると共に、カースト制度はインド全土に、巨大な既得権を形成するもとともなっているということである。
何故インドのソフトウエア産業は強いのか | コラム | 大和総研グループ | 児玉 卓
たとえばこのホテルの場合、働き者で何でもこなすスタッフがいれば、このエレベーターおじさんの仕事は無くなってしまいます。
日本人の視点からすれば、
「そんな効率の悪いことせずに、1.5倍の給料あげて2人分の仕事を1人にしてもらえばええやん!」
と、正直自分も思うのですが、一つの国に多種多様な人種・宗教・言語を持つ13億人が暮らす、というインドの状況を考えると、あながちそうとも言えません。
それに、このおじさんはこのホテルで何年働いているのでしょう、もし仕事が無くなったら家族をどうやって養えばいいのでしょうか。新しい仕事を見つけるのが簡単だとは思えません。
雇う側のホテルは、経済的な動機よりも社会的な動機を重視していると言えるのではないでしょうか。
なお、上記で引用させてもいただいた「ワークシェアリング」という考え方は、近年、労働者の過労死・失業による自殺などと関連して、日本やアメリカなどで話題になることがあります。インドはこうした観点からすれば、ある意味先を行っていた?のかもしれません。
経済的な効率性も大事だが、社会的な価値(今回の場合は雇用の創出)を忘れない。
実はこれ、今回のインターンシップ先企業の理念だったりします。
もちろん、このワークシェアリング的考え方にも課題はあると思います。
例えば、
「仕事はあるんやからそんなに頑張らなくてもええか~。クビにはならんし。」
という勤労意欲の低下はまさにその一つでしょう。
これは個人的見解ですが、
【勤労意欲が低い→仕事を分け合う】
というよりは、むしろスタートとしては
【仕事がない→仕事を分け合う→勤労意欲が低くなる】
というのが現状ではないかと思っています。もっとも、歴史家でもなければ、100年生きてるわけでもないのでわかりませんが。どなたか詳しい方がいればご教授くだれば幸いです。
また、インドではこのワークシェアリング的システム=カースト制度 であるとも言うことができ、職業選択の自由・平等性はいまだに課題だと感じます。
今後はこのワークシェアリングという考え方に加えて、
従来のカースト制度とは異なる形で、より多くの雇用の創出がなされることで、
インドの人々の暮らしの質も向上していくのではないかと思います。
今まさに労働環境の問題などで日本では議論が起きていると思うのですが、インドから私たちが学べることもありそうです。
以上、少しお堅くなってしまいましたが、武本でした。